タバコのヤニの正体と問題点 タバコの種類による違い


タバコでよく問題となるヤニがなんなのか、その問題点とタバコの種類によるヤニの違いを調べました。

ヤニとはなんなのか

タバコを燃焼して出てくる粘液のことをヤニと言います。 これはいったいなんなのでしょうか。

タバコのヤニは、タールのことです。 もちろん、いろんな有害物質が溶け込んでいる可能性は十分にありますが、基本はタールです。

タールというのは、石炭や木材などに熱を加えてできる、黒色・黒褐色のねばりけのある油状の物質の総称です。 ひとつの化学式で表されるような物質のことではありません。 いろんなものが含まれている黒いねばねばしたベタつくドロドロの物質がタールです。 言い換えるなら、タバコから出てくるもののうち常温で気体ではないもののことです。

タバコの3大有害物質といわれているもののひとつですね。

ヤニ・タールの問題点

このヤニに悩んでいる人は多いはずです。 あとで詳しい数字を紹介しますが、副流煙にもタールが含まれています。

歯や肺が黒くなる

ヤニ・タールは人体に吸収されるものではありません。 もともとが黒色・黒褐色のねばりけのある物質ですから、歯や喉、肺にくっつきます。 肺についたタールはとれません。

歯についたヤニは喫煙者の中でも問題視している人が多く、ヤニ対策用の歯磨き粉を使っている人もいますね。 ただ、そういったものは強い研磨剤を入れているものが多いそうで、おすすめできるものではありません。

(ガン)

タールには発ガン性物質が多く含まれています。 例としてはベンゾ[a]ピレン、芳香族アミン類、たばこ特異的ニトロソアミン類があり、その種類は約70種類といわれています。

タバコの煙を吸うと、タールが肺や喉にくっついて発がん性物質が体内に入り、がんを引き起こします。 肺がんに限らず、肝臓ガン、大腸ガン、膀胱ガンなども喫煙によってリスクの高まる病気です。 ガンの治療となると、健康保険でカバーされる金額も大きなものになりますから、ひとりの健康上の問題だけでなく社会的な問題ともなっています。

動物実験では、タールを耳に塗るだけでがんになりました。 たとえば日本では 1915年に山極勝三郎さんと市川厚一さんがウサギの耳にタールを塗り、ウサギが皮膚ガンになりました。

ねばねばする

喫煙者の指はだいたいねばねばしています。 タールがついているからです。

喫煙者の使っているパソコンのキーボードもねばねばしていることが多いです。 これもタールの影響です。

副流煙とタール

タールの問題は、喫煙者のみの問題ではありません。 副流煙にも看過できないレベルのタールが含まれています。 ですから、非喫煙者もまた、受動喫煙によって医療費を支払い、社会的問題に意図せず関わってしまうことになります。

タバコの副流煙に含まれるタールの量は、なんと主流煙の3.4倍です(厚生労働省「喫煙と健康」による)。 主流煙よりも副流煙の方が多いんです。 ちなみに他の3大有害物質であるニコチンは、主流煙に比べて2.8倍、 一酸化炭素は4.7倍でした。

タバコの種類とタールの違い

低タールタバコ

低タールタバコというのがあります。 これは機械でタバコを吸引した時に吸入されるタール量が少ないものです。 タバコの外箱の表示で 「ニコチン 0.1 mg, タール 1 mg」 と書かれていたら低タールタバコです。

「ニコチン 0.1 mg, タール 1 mg」というのはあくまで主流煙に含まれる量のことで、どれくらいタバコに含まれているのかはまた別です。 タバコの吸い方も一通りではないため、低タールタバコだから人体に入るタールが少ないとも言い難く、副流煙に関していうとタールが増えることも十分に考えられます。 というのも低タールたばこというのはタバコの周りに穴を空けて、タバコの外にタールを逃しているからです。

理論はともかく、実際に低タールタバコでガンになりにくいのかという調査が行われたことがあります。 結果は悲惨なもので、低タールタバコだからといってガンの発症に影響は見られませんでした。 “Harris.BMJ 328:72.2004” で検索すると関連資料が見つかります。 厚生労働省からもこれについてレポートが出ていて、実際に実験したところ身体への影響は特に変わらなかったとレポートされています(厚生労働省「喫煙と健康」による)。

加熱式タバコ

記事執筆時点で日本で売られている加熱式タバコには、 iQOS(アイコス), glo(グロー), Ploom TECH(プルーム・テック) の3種類があります。 機種でいえばもっとバリエーションは増えます。

加熱式タバコは従来のタバコに比べてタールが少ないと言われていますが、結局加熱式タバコもタールを含んでいます。 タールが少ないといっても、 たとえば JT の Ploom TECH(プルーム・テック) でも、 タールが少なくて物足りない人のために新機種を出してくるなどしていますから、 タールそのものの低減メリットはないと思った方がいいです。 タバコ各社は加熱式たばこについて、「健康への影響は従来の紙巻きタバコに比べれば低い」と言っていますが、測定環境に依存しますし、加熱式タバコが販売されてから統計的に有意といえる測定もなされていません。

タール以外の物質で言えば 加熱式タバコの主流煙中には従来のタバコとほぼ同レベルのニコチンや揮発性化合物(アクロレイン, ホルムアルデヒド)、約3倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)といった有害物質が含まれているとわかっています (Auer R, et al. Heat-Not-Burn Tobacco Cigarettes: Smoke by Any Other Name. JAMA Intern Med. 177:1050-1052, 2017. による)。

電子タバコ

電子タバコといっても世界を見渡せばいくつかあります。 その中でも日本で販売されている 電子タバコ VAPEは、 ニコチン・タールを含みませんVAPE自体は海外でも販売されている電子タバコで、海外にはニコチン・タールが添加されているものもあります。

ニコチンとタールがなかったらいったいなんなの? という疑問もありますが、 仕組みとしてはリキッドとよばれる液体を電気の力で気化させて吸い込むというものです。 リキッドは通販で驚くほどたくさんのバリエーションが販売されていますね。

ニコチンとタールが入っていないということで、喫煙者の方には禁煙グッズとしておすすめされることもあります。

ここでは例として VAPE を取り上げましたが、ほかにもニコチン・タールなしの電子タバコはあります。

以上、タールについてのまとめを終わります。