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自律的な組織を作る目的で行った施策が、実質的にホウレンソウの運用にも役立っていたので、ホウレンソウの視点からまとめました。 報告・連絡・相談、通称ホウレンソウは重要だとよく言われますが、マネージャになって「報告・連絡・相談をしろ」と言ったことはありませんでした。
私は普段、「報告」、「連絡」、「相談」という言葉を使わず、「連携」だとか「連絡」と総称して呼んでいますが、 この記事ではできるだけ分けて使うようにしました。
誰の問題なのか
マネージャという立場では、状況がどうなっているのかわからないと正しい指示を出すことができません。 そこで報告・連絡・相談をしてほしいと思うのですが、マネージャ個人の思い通りにメンバが動くはずもありません。 ましてや「ホウレンソウをしろ」と言ったのでは、なにをどうやってホウレンソウするのか正確に伝わらず、お互いに疲弊していきます。
ここで重要なのは、報告・連絡・相談をしないことが誰のどんな問題になるのかということです。 仮に報告・連絡・相談がなかったとしてもメンバは困りません。 困るのはマネージャです。
つまり、対策を講じるべきはマネージャです。 マネージャが問題のポイントを一番理解しているはずです。
ホウレンソウしてくれない、と嘆いている暇があったら聴きにいったほうがいいです。 全メンバに直接聴きにいくのが大変なら、報告・連絡・相談ができる仕組みを整えましょう。
なぜ問題なのか
報告・連絡・相談がないとなにが問題なのでしょうか。
下は報告・連絡・相談がない場合に起こりうる問題の例です。
- 仕事の完了がわからないと、他チームへの連絡が遅れて、作業全体の進捗が遅延する。
- 仕事で困ったとき、他人の知恵を借りればすぐに解決するものでも、ひとりで悩んでいると時間だけがやたらかかることになりかねない。 チームとして成果を出すことが重要なので、ひとりで悩むことはチームの成果を下げることになることが多い。
- 不安なまま進めて後で問題が発覚するよりも、誰かが確認することで未然に問題を防げるならそのほうがいい。 不安だという状況を伝えてくれれば配慮できる。
- 想定外の事態が発生したときに、連絡してくれないと迅速な対応がとれない。 問題の大きさにもよるが、迅速な対応がとれないと被害が拡大することがある。
上のような問題を共通認識として確認しておくことはなにより重要です。 目的への理解がないと、なんのための報告・連絡・相談なのかメンバは理解できず、めんどくさい上司というレッテルが貼られることでしょう。 具体的に進行中のプロジェクトの例などもあわせて説明できると一番いいです。
報告・連絡・相談したいと思わせるには
上のような問題点を解決したいのは、完全なマネージャ都合です。 一社員にとって会社全体がどうなろうと、そんなことは関係ありません。 (給与が減るとなると大事かもしれませんが。)
問題点を共有しただけでは、メンバは動きません。 メンバにとって、報告・連絡・相談をしてマネージャの問題を解決したとしてもメンバにメリットがありませんから。
メンバに自律的に動いてもらうためには、メンバにメリットがあることを伝える必要があります。 私の職場では、次のようなものがメンバのメリットでした。
- 状況がわかれば、知識のある人がサポートすることもでき、仕事を早く終わらせることができる。
- 状況を定期的にチェックすることで、作業漏れを防ぎやすくなる。 (作業漏れを報告・連絡・相談だけで防ぐのはやめましょう)
- 作業前にこれから作業する内容を聞いておけば、もっと効率的な方法を提案できるかもしれない。
仕事が速く終わる、ミスが減る、これならメンバもホウレンソウに賛成してくれるでしょう。
報告・連絡・相談が自然にできる仕組みづくり
メンバが賛成したとしても、仕組みがなければ人は動けません。 私(マネージャ)は1週間に1時間しか会社にいないけど、会社にいる時をみはからってホウレンソウしに来てくれなんてのは実行不可能な依頼です。
緊急時の連絡の必要性は誰でも理解できると思うのでとくに説明しません。 定常的な報告・連絡・相談をどうするかです。
私の職場では、スタンドアップミーティングと振り返りミーティングで報告・連絡・相談を円滑にしました。
今でこそアジャイル開発の一環として「スタンドアップミーティング」「振り返りミーティング」が有名になってはいますが、 昔からそういうことを行っている営業のチームもあります。 決して新手の手法ではありません。
スタンドアップミーティングではそれぞれのメンバが次のことを話します。 職場によって内容・やり方は少しずつ変わりますが、おおむね次のような構成です。
- 前回から今回のミーティングまでにやったこと
- 今回から次回のミーティングまでにやること
- 困っていること・気になっていること
私は最後に、連絡事項を伝えたり、聞いたりしていました。 深く話すべきことが見つかったら、ミーティングの後に関係者を集めて話をします。
やったこと、やることを話すことで報告・連絡ができます。 困っていること・気になっていることは相談の先駆けとなります。
メンバ全員でやることで、メンバとマネージャの2人の知恵よりも大きな効果をだすことができます。
振り返りミーティングでは KPT といわれるやり方で改善を図っていきます。 スタンドアップミーティングだけでもそれなりに問題点を見つけたりすることはできるのですが、 短期的なものに限られます。 広い視野で問題を見つけたり、改善を図るのには振り返りミーティングをやったほうが効果的だと思います。 大域的な報告・連絡・相談にあたります。
スタンドアップミーティングと振り返りミーティングについての詳しいことは他の文献を参考にしてください。
マネージャは誰に報告・連絡・相談をする?
マネージャも報告・連絡・相談を関係者に対して行います。 社内では、マネージャにとっての上司と部下、その他チームメンバになるでしょう。
部下への報告・連絡・相談をしないマネージャがいますが、マネージャの動きはメンバの動きに直結するため、ホウレンソウは同様に必要だと私は考えます。
新しい仕事がきそうだ、現在のスケジュールが延期になりそうだ、予算が削減されそうだ、そういった情報は一緒に仕事をするメンバにとって重要です。 その他マネージャの動きを知ることができれば、メンバが気を利かせて重要ポイントを先回りで抑えることもできます。 マネージャの抱えている問題はチームにとっての問題ですし、もしかしたらメンバの知恵で解決するかもしれません。 機会を作るチャンスがあるのに活用しないのはもったいないです。
メンバからすれば、「そんなスケジュールになっているなら早めに教えてくれよ! 仕事の配分を変えて対処したのに!」ということにもなりかねません。 自分は重要なことを伝えず、 「伝えろ」とだけ要求してくるマネージャは信用されません。