目次
代数系入門(松坂和夫) の 第2章 §5 問題5, 6, 7, 8 の解答です。
問題5
命題
( H ) が ( G ) の部分群で ( a in G ) のとき、 ( aHa^{-1} = left{ axa^{-1} | x in H right} ) も ( G ) の部分群である。
証明
( e in H ) より ( e = aea^{-1} in aHa^{-1} ) で、 ( aHa^{-1} ) は単位元を含みます。
( h_1, h_2 in H ) について ( ( a h_1 a^{-1} ) ( a h_2 a^{-1} ) = a h_1 h_2 a^{-1} in aHa^{-1} ) で、 ( aHa^{-1} ) は演算について閉じています。
( h in H ) について ( ah^{-1}a^{-1} ) を考えれば、 ( (ah^{-1}a^{-1})(aha^{-1}) = e ) , ( (aha^{-1})(ah^{-1}a^{-1}) = e ) となるので、 ( aHa^{-1} ) は逆元を含みます。
以上より、 ( aHa^{-1} ) は群になります。
問題6
命題
( H ) を ( G ) の部分群、 ( N ) を ( G ) の正規部分群とすれば ( HN ) は ( G ) の部分群である。 ( H ) も正規ならば ( HN ) も正規である。
証明
( H ) , ( N ) は部分群なので ( HN ) にも単位元が存在します。
( hn in HN , ( h in H, n in N ) ) について、 ( G ) の上での逆元は ( n^{-1}h^{-1} ) です。 これについて ( n^{-1}h^{-1} in N h_0 = h_0 N subset HN) なので、 ( HN ) は逆元を含みます。
以上より、 ( HN ) は ( G ) の部分群となります。
また、 ( H ) も正規部分群のとき、 ( forall g in G, gHN = (Hg)N = H(gN) = HNg ) なので、 ( HN ) も正規部分群です。
問題7
命題
( N_1 ) , ( N_2 ) が ( G ) の正規部分群ならば、 ( N_1 cap N_2 ) も ( G ) の正規部分群である。
証明
第2章 §3 問題1 より ( N_1 cap N_2 ) は ( G ) の部分群です。 ここでは 正規であることのみ証明します。
任意の ( G ) の元 ( g ) と ( N_1 cap N_2 ) の元 ( n ) について、 ( g n g ^{-1} in N_1 wedge g n g ^{-1} in N_2 ) です。 よって ( g n g^{-1} in N_1 cap N_2 ) となり、 ( N_1 cap N_2 ) は正規部分群となります。
問題8
よくある問題で、サイエンス社の 代数演習 (数学演習ライブラリ) でも取り上げられています。
命題
( N ) が ( G ) の部分群で ( ( G : N ) = 2 ) ならば ( N ) は ( G ) の正規部分群である。
証明
( G ) の 剰余類として ( N ) , ( aN ) を考えます。 このとき ( a in G cap N ^c ) です。 また右剰余類は 第2章 §4 問題1 より ( N ) , ( N a^{-1} ) ですが、 ( Na = N ) とすると 仮定に反するので ( Na^{-1} = Na ) となります。 そこで右剰余類として ( N ) , ( Na ) を考えます。
( gn in N ) なる元 ( g ) については ( g in N ) ですから ( gN = N = Ng ) です。
( gn in aN ) なる元 ( g ) を考えます。 このとき ( ng in N ) とすると ( g = n^{-1}ng in N ) より ( g in N ) となって仮定に反するので ( ng in Na ) です。 よって ( aN subset Na ) です。 逆も同様にして成り立ち、 ( Na subset aN ) となります。 よって ( aN = Na ) です。
以上より、 ( forall g in G, gN = Ng ) なので ( N ) は正規部分群です。
参考情報
代数演習 (数学演習ライブラリ) では類別を使った証明が載っています。 代数系入門(松坂和夫) では、 第1章 §6 に類別についての説明があります。
上の証明では直接「類別」という言葉を使っていませんが、 内容的に類別を使っています。