今回読むのは Section III のところです。 テスト駆動開発のパターン について書かれています。
Isolated Test
Test の独立性についてですが、 Kent Beck は過去の経験から次のように綴っています。
First, make the tests so fast to run that I can run them myself, and run them often. That way I can catch errors before anyone else sees them, and I don’t have to dread coming in in the morning. Second, I noticed after a while that a huge stack of paper didn’t usually mean a huge list of problems. More often it meant that one test had broken early, leaving the system in an unpredictable state for the next test.
その後 Money Example の演算の実装と、 全体を俯瞰した傾向、 テストの品質について重要な記述がありますが、 ひとつひとつ紹介すると長くなるので割愛します。 でもひとつだけ気になる記述があるので紹介します。
Easy to read for programmers – Unsynchronized documentation is scarce. The tests will be more valuable if they are readable, giving an interesting second perspective on the messages hidden in the source code.
約70ページにもわたって MONEY EXAMPLE という事例が書かれています。 あまりに多いので一気に読むのはちょっと辛いですが、テストドリブンを夢見てがんばって読んでいます。 今回は テストドリブンの序盤となる部分をyんでみました。
実装の前にテストをすべて書くのは無理
MONEY EXAMPLE のところを見ると、 Kent Beck ですら最初にすべてのコードを書かないということがわかります。 MONEY EXAMPLE で取り上げられている単純な金額の掛け算でも、コードが徐々に完成していくのにつれてテストコードも変わっていきます。 よく、最初にテストコードを書くなんて無理だからテスト駆動開発は無理だという人がいますが、テスト駆動とはそういうことではないんですね。
MONEY EXAMPLE では、 存在しないクラスを使ってテストを書き始めます。 Red どころか コンパイルすらできないテストを書くところから始めています。 必要なクラスを考えてクラスのテストから書き始めるのかと思いましたがそうではありませんでした。 最後の理想形をテストに書いていました。
テストドリブンの手順
ToDo の整理をしてからテストを始めます。 この ToDo List はコードが完成するまでついて回ります。 載っている事例では、 存在しない Dollar クラス を使ってテストを書くところから始めています。 そして テストを通してできるクラスのメソッドは(最初は)あくまでスタブです。
MONEY EXAMPLE は次のようにして進めていました。
テストを書く。存在しないクラスも使ってよい。
テストをコンパイルできるようにする。
テストを Green にする。
リファクタを行い、重複を取り除く。
テストを Green にする方法
固定値を返すなどして、テストを通るようにする。 (実装コードとしては完成ではない)
明らかにわかるコードを実装する。
複数の側面からのテストを書く。 (Triangulation)
Triangulation というのは、 テストケースを追加することで固定値での返り値を返せないようにするように、複数のパターンのテストを書くことで実装コードを規定していく方法です。 たとえば 1 から n までの総和を求める関数があったとして、 Sum(1) == 1 だけだったら Sum の返り値は 固定の 1 でもいいですが、 Sum(5) == 15 だと実装せざるを得なくなります。 Kent Beck は本当にどのようにリファクタすればよいか迷うようなときに Triangulation を使うそうです。 どうすればいいのかわかっている場合は Triangulation のためのテストコードは書かれません。
MONEY EXAMPLE の中で出てきた Value Object というのも重要だと思うのでまとめておきます。
Value Object の持つメソッドの戻り値は必ず新しいオブジェクトにします。 下に例を書きました。 Num の add メソッドの戻り値は新しいインスタンスになっています。 これにより add の前後で Num のインスタンスは変更することがありません。 また、 primitive value ではないので、 別途 equal メソッドを実装しておかないとテストコードを書くときに困ることがあります。