オイラーの多面体定理を考えてみましょう。 (もともとはグラフ理論での定理なのですが。)
オイラーの多面体定理
多面体では次の等式が成り立つ。
頂点の数 – 辺の数 + 面の数 = 2
平面上の図形においてもこの式は成り立つ。
今回はこの式が本当に正しいのか検証してみようという趣旨です。 オイラーの式は平面上で成り立つ式なので、平面上で考えます。 多面体は平面図形に置き換えられるので、 平面図形でオイラーの式が成り立てば 多面体でも成り立つことになります。
多面体を平面に投影する
多面体は平面図形に投影することができます。
左の4面体は右のように平面に投影できます。 4面体の面は4角形になったのが3つ、残る面はまわりのエリアです。 点と線で 4つの区域に分けられていますね。
証明
平面上に描かれた点と線を考えます。 線の両端が点だと考えてください。 全ての線は点を介してつながっているものとし、点以外では線がつながらないものとします。 線は曲線も含みます。
数学的帰納法で考えます。 点の数を V 、 線の数を E 、 面の数を F とします。 V–E+F=2 を証明すればOKです。
E=1 のとき
辺 E は 1, 面 F は 1, 点 V は 2 です。
V–E+F=2–1+1=2オイラーの式は成立しています。
E=k∈N でオイラーの式が成り立つとき
E=k でオイラーの式が成立するときの E 、 V 、 F の値をそれぞれ Ek 、 Vk 、 Fk とすると、次の式が成り立ちます。
Vk–Ek+Fk=2ここで Vk 、 Fk の値は k によって一意に定まるものではなく、 あくまで前提とした条件での値です。
図形に線を足す場合を考えます。 線は点を介してつながっているので、新しく引く線は両端または一方の端が既存の線とつながります。
線の一方のみが既存の点に接続する場合
点が新たに1つ増えるので V=Vk+1 、 線が新たに1つ増えるので E=Ek+1 、 面の数は変わらないので F=Fk 。
V–E+F=(Vk+1)–(Ek+1)+Fk=Vk–Ek+Fk=2線の両端が既存の点に接続する場合
新しく線を引く前の状態で、 既存の線は繋がっているため 新しく引く線の片側または両側は線が閉じていることになる。 すなわち線を新しく引くと、 面の数が1増える。
これより 点の数は増えず V=Vk 、 線の数は1増えて E=Ek+1 、 面の数も1増えて F=Fk+1 。 これは 線の始点と終点が同じ場合も含みます。
V–E+F=Vk–(Ek+1)+(Fk+1)=Vk–Ek+Fk=2以上より、 E=k∈N で オイラーの式が成立していれば E=k+1 でも成立することが分かる。
よって すべての場合で オイラーの式は成立する。
証明にしてはちょっとゆるい感じがしますが、 式が成り立つことを理解していただけるとうれしいです。
このオイラーの定理を使うと、デカルトの定理も証明できます。 詳細は デカルトの定理を証明する をご覧ください。