数学: 球の体積を導出する


円の面積を導出する に続いて 球の体積 ( \( \frac{4}{3} \pi r ^3 \) ) を導出してみることにしました。 半径1の球について考えます。

前提

次のことを既知とします。

  • 円の面積は 半径を \( r \) として \( \pi r^2 \) であらわされる。 (参考: 円の面積を計算する)
  • 円柱の体積は底面積と高さの積になる。
  • 三平方の定理(ピタゴラスの定理)を知っている。

半分の体積を円柱で評価する

球を半分に切って、半球の体積を考えます。 この半球の体積を \( v \) とします。


半球

上からの評価

この半球を複数の円柱で外側から覆います。 高さが \( \frac{1}{n} \) の複数の円柱で、円に接するものを考えます。

1/n1√(1 – (1/n)×(1/n))
横から見た図

円柱の体積の和を考えます。 上の図で一番下の段にある円柱は、 高さが \( \frac{1}{n} \) 、 底面が半径1の円ですから、 体積は \( \frac{1}{n} \pi \) になります。

下から 2番目にある円柱は、高さが \( \frac{1}{n} \) 、 底面が(三平方の定理より) \( \sqrt{1 – \left( \frac{1}{n} \right) ^2 } \) の円ですから、 体積は \( \frac{1}{n} \left\{ 1- \left( \frac{1}{n} \right)^2 \right\} \pi \) となります。

以下同様にして \( k \) 番目 ( \( k = 1, 2, … , n \) ) の円柱の体積は \( \frac{1}{n} \left\{ 1 – \left( \frac{k-1}{n} \right) ^2 \right\} \pi \) となります。

これらの円柱をすべて足した値は \( v \) より大きいため、 次の式が成り立ちます。

\begin{eqnarray*}
v & \lt & \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{n} \left\{ 1 – \left( \frac{k-1}{n} \right) ^2 \right\} \pi \\
& \lt & \sum_{k=0}^{n-1} \frac{1}{n} \left\{ 1 – \left( \frac{k}{n} \right) ^2 \right\} \pi \\
& \lt & \frac{1}{n^3} \pi \sum_{k=0}^{n-1} \left( n^2 – k^2 \right) \\
& \lt & \frac{1}{n^3} \pi \left[ n^3 – \frac{1}{6} \left( n – 1 \right) n \left\{ 2 \left( n – 1 \right) + 1 \right\} \right] \\
& \lt & \frac{1}{n^3} \pi \left\{ n^3 – \frac{1}{6} \left( 2n^3 – 3n^2 + n \right) \right\} \\
& \lt & \frac{1}{n^3} \pi \left( \frac{2}{3} n^3 – \frac{1}{2} n^2 + \frac{1}{6} n \right) \\
& \lt & \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right)^2 – \frac{3}{n} \right\} \pi
\end{eqnarray*}

\( \sum \) の計算は \( n^k \) の総和 に記述があります。 わからなければそちらをご参考ください。

下からの評価

半球に内接する複数の円柱を考えます。 高さが \( \frac{1}{n} \) の円柱 ( \( n – 1 \) ) 個 です。

1/n1√(1 – (1/n)×(1/n))
横から見た図

実際に計算をしてもいいのですが、 先ほど上で考えた値(半球を覆う複数の円柱の総体積)から一番下の円柱の体積を取り除いたものになります。

\begin{eqnarray*}
& & \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \pi \left\{ \left( \frac{1}{n} \right)^2 – \frac{3}{n} \right\} – \frac{1}{n} \pi \\
& = & \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \pi \left\{ \left( \frac{1}{n} \right)^2 + \frac{3}{n} \right\}
\end{eqnarray*}

これは 半球の体積 \( v \) よりも小さいですから次の式が成り立ちます。

\[ \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \pi \left\{ \left( \frac{1}{n} \right)^2 + \frac{3}{n} \right\} \lt v \]

さて、 \( v \) の不等式を見ると、 \( n \) が大きくなるにつれて \( v \) の上からと下からの評価値が \( \frac{2}{3} \pi \) に近づくことがわかります。 極限を考えれば半球の体積もわかりますが、 ここでは 円の面積を計算する でやったのと同じやり方で、 半球の体積が \( \frac{2}{3} \pi \) になることを確かめます。

背理法による確認

\( v = \frac{2}{3} \pi \) となることを、 背理法を使って確かめます。

上からの評価

\[ v \lt \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 – \frac{3}{n} \right\} \pi \]

\( v = \frac{2}{3} \pi + \delta \) ( \( \delta \gt 0 \) ) と仮定します。 すると次の式が成り立ちます。

\[ \frac{2}{3} \pi + \delta \lt \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 – \frac{3}{n} \right\} \pi \]

この式を整理すると

\begin{eqnarray*}
\delta & \lt & – \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 – \frac{3}{n} \right\} \pi \\
\frac{6 \delta}{\pi} & \lt & – \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 – \frac{3}{n} \right\} \\
\frac{6 \delta}{\pi} & \lt & – \left\{ \left( \frac{1}{n} – \frac{3}{2} \right) ^2 – \frac{9}{4} \right\} \\
& \lt & – \left( \frac{1}{n} – \frac{3}{2} \right) ^2 + \frac{9}{4} \\
\left( \frac{1}{n} – \frac{3}{2} \right) ^2 + \frac{6 \delta}{\pi} & \lt & \frac{9}{4} \\
\left( \frac{1}{n} – \frac{3}{2} \right) ^2 & \lt & \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} . \\
\end{eqnarray*}

ここで、 左辺は正なので右辺も正。 また \( n \geq 1 \) より \( \frac{1}{n} – \frac{3}{2} \lt 0 \) 。 よって

\begin{eqnarray*}
– \frac{1}{n} + \frac{3}{2} & \lt & \sqrt{ \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} } \\
– \frac{1}{n} & \lt & \sqrt{ \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} } – \frac{3}{2} \\
\frac{3}{2} – \sqrt{ \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} } & \lt & \frac{1}{n} \\
n \left( \frac{3}{2} – \sqrt{ \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} } \right) & \lt & 1 \\
n & \lt & \frac{1}{\frac{3}{2} – \sqrt{ \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} }} .
\end{eqnarray*}

この式はすべての \( n \) について成り立つはずですが、 \( n \) が \( \frac{1}{\frac{3}{2} – \sqrt{ \frac{9}{4} – \frac{6 \delta}{\pi} }} \) 以上になると成り立たないので矛盾します。 よって

\[ v \leq \frac{2}{3} \pi . \]

下からの評価

\[ \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 + \frac{3}{n} \right\} \pi \lt v \]

\( v = \frac{2}{3} \pi – \delta \) ( \( \delta \gt 0 \) ) と仮定します。 すると次の式が成り立ちます。

\[ \frac{2}{3} \pi – \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 + \frac{3}{n} \right\} \pi \lt \frac{2}{3} \pi – \delta \]

この式を整理すると

\begin{eqnarray*}
– \frac{1}{6} \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 + \frac{3}{n} \right\} \pi & \lt & – \delta \\
– \left\{ \left( \frac{1}{n} \right) ^2 + \frac{3}{n} \right\} & \lt & – \frac{6 \delta}{\pi} \\
\frac{6 \delta}{\pi} & \lt & \left( \frac{1}{n} \right) ^2 + \frac{3}{n} \\
& \lt & \left( \frac{1}{n} + \frac{3}{2} \right) ^2 – \frac{9}{4} \\
\frac{6 \delta}{\pi} + \frac{9}{4} & \lt & \left( \frac{1}{n} + \frac{3}{2} \right) ^2 \end{eqnarray*}

ここで、 左辺、右辺ともに正となるので

\begin{eqnarray*}
\sqrt{ \frac{6 \delta}{\pi} + \frac{9}{4} } & \lt & \frac{1}{n} + \frac{3}{2} \\
\sqrt{ \frac{6 \delta}{\pi} + \frac{9}{4} } – \frac{3}{2} & \lt & \frac{1}{n} \\
n \left( \sqrt{ \frac{6 \delta}{\pi} + \frac{9}{4} } – \frac{3}{2} \right) & \lt & 1 \\
n & \lt & \frac{1}{\sqrt{ \frac{6 \delta}{\pi} + \frac{9}{4} } – \frac{3}{2}} .
\end{eqnarray*}

この式はすべての \( n \) について成り立つはずですが、 \( n \) が \( \frac{1}{\sqrt{ \frac{9}{4} + \frac{6 \delta}{\pi} } – \frac{3}{2}} \) 以上になると成り立たないので矛盾します。 よって

\[ v \leq \frac{2}{3} \pi . \]

以上より \( \frac{2}{3} \pi \leq v \leq \frac{2}{3} \pi \) すなわち \( v = \frac{2}{3} \pi \) 。

半球の体積が \( \frac{2}{3} \pi \) なので、 球の体積はその2倍の \( \frac{4}{3} \pi \) となります。