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有理数の定義は既知とします。 有理数でない実数を無理数といいます。
ここでは \( \sqrt{2} \) が無理数であることを証明します。
証明
背理法で証明する。
\( \sqrt{2} \) が 有理数だと仮定すると、 ある互いに素な自然数 \( m, n \) が存在して次のように書ける。
\[ \sqrt{2} = \frac{m}{n} \]これより
\[ 2n^2 = m^2 . ]左辺 ( 2 n^2 ) は偶数なので ( m^2 ) も偶数。 即ち 自然数 \( k \) を用いて \( m = 2k \) と書くことができ、
\begin{array}{crcl} & 2 n ^2 & = & ( 2k )^2 \\ & & = & 4k^2 \\ \Leftrightarrow & n^2 & = & 2k^2 \end{array}これより \( n \) も偶数だが、 \( m, n \) が互いに素であることに反する。 よって \( \sqrt{2} \) は無理数。
同様に、 \( n \) が素数となるときの \( \sqrt{n} \) が無理数になることも証明できます。
一般的に \( b \) が平方数でないとき、 \( a \sqrt{b} \; (a, b \in \mathbb{N}) \) は無理数になります。 有理数と無理数の積は無理数になりますので、 \( \sqrt{b} \) が無理数になることを証明すれば十分です。 また、 \( b \) に 2回かけられている素因子は ルートの外に出せるので、 \( b \) が素数の積になっている場合のみ証明すれば十分です。
証明
\( b \) が \( k \) 個の 異なる素数 \( b_1, b_2, \cdots , b_k \) を用いて 次のように素因数分解されるとする。
\[ b = b_1 b_2 \cdots b_k ]\( \sqrt{b} \) が有理数だと仮定すると、 ある互いに素な自然数 \( m, n \) が存在して次のように書ける。
\[ \sqrt{b} = \frac{m}{n} \]これより
\[ b n^2 = m^2 \]左辺 \( b n^2 \) は \( b_1, b_2, \cdots, b_k \) を素因子に含むので、 右辺 \( m^2 \) も \( b_1, b_2, \cdots, b_k \) を素因子に含む。 すなわち \( m \) は 適当な自然数 \( c \) を用いて
\begin{eqnarray*} m & = & c b_1 b_2 \cdots b_k \\ & = & cb \end{eqnarray*}と書くことができる。 従って
\begin{array}{crcl} & b n^2 & = & ( cb )^2 \\ & & = & c^2 b^2 \\ \Leftrightarrow & n^2 & = & c^2 b \end{array}\( m \) と同様にして \( n \) も \( b \) の倍数となるが、 これは \(m, n\) が互いに素であることに矛盾する。
以上より \( \sqrt{n} \) は \(n\) が平方数の場合のみ有理数(整数)になることがわかります。
今回はルートについて証明を行いましたが \( \sqrt[m]{n} \; (m, n \in \mathbb{N}) \) についても同様に証明できます。
補足命題
有理数と無理数の積は無理数である。
証明
背理法で証明する。
\( p, q, r, s \) を 整数、 \( x \) を無理数として、 有理数 \( \frac{p}{q} \) と 無理数 \( x \) の積が 有理数 \( \frac{r}{s} \) になると仮定する。 このとき
\[ \frac{p}{q} = x \cdot \frac{r}{s} \]となる。 式変形して
\[ x = \frac{ps}{qr} \]となるが、 右辺が有理数となり、 \( x \) が無理数であることに矛盾する。
以上より 有理数と無理数の積は無理数。