数学: 円の面積を導出する


円の面積がなぜ πr2 ( r は半径 ) になるのかを説明します。 (使っている図が悪いので後日差し替えます。)

掛け算で三角形の面積を求めるものの、その他の積分計算や極限計算は使わないようにしました。 掛け算の記号 ( × ) を省略することと、 文字で数を表していることと、 x2=x×x と、 ルート ( xx×x=x となる正の数 ) がわかれば中学校あるいは小学校の算数・数学で理解できると思います。

ここでは話を簡単にするために、 半径1の円、単位円を考えます。

円周率の定義

円周率を π で表します。 この π は円において次の式を満たす数とします。

(円周の長さ)=2π×(半径)

単位円においては、 円周が 2π となります。

具体的な値としては 3.141592… として知られています。

円の面積を 正 n 角形 で評価する

内接する 正 n 角形 と 外接する 正 n 角形 を考えます。 ( n3 )

n 角形 の面積を 2n 個の 直角三角形 に分割して考えます。

28個の直角三角形に分けられた内接正14角形と外接正14角形

そして 2n 分割された直角三角形のうちの一つを取り出して、 x,y を次のように定めます。

yx1
  • x : 内接正 n 角形 を分割した直角三角形の、 直角と円の中心を結ぶ辺の長さ
  • y : 内接正 n 角形 を分割した直角三角形の、 直角を通り円弧に交わる辺の長さ

このとき 外接正 n 角形 を分割した直角三角形の、 直角を通り円に接する辺の長さは 相似比から xy となります。 上の図で赤色になっている円弧の長さは、 円周 2π2n 分割した円弧なので 2π2n=πn となります。

yx1π/ny/x

三角形の面積を求めて、内接及び外接正 n 角形の面積を求めます。

内接正 n 角形 を 2n 分割した直角三角形の面積は 12xy 、 外接正 n 角形 を 2n 分割した直角三角形の面積は y2x です。

これらを 2n 倍すると 内接及び外接正 n 角形の面積を求めることができます。

  • 内接正 n 角形 : nxy
  • 外接正 n 角形 : nyx

円の面積は内接正 n 角形より大きく 外接正 n 角形より小さいですから、 円の面積を s とすると次の不等式が成り立ちます。

nxy<s<nyx

x,yn で評価する

先ほど s の比較の式を得ることができましたが、 このままでは s を求めることはできません。 そこで x , y を不等式で評価します。

x の評価

まずは x について評価をします。

円を分割したときの、三角形の辺と円周の交点から鉛直方向に線をひきます。 すると円の直径は、鉛直方向の線により n 個に分割されます。

分割された円の直径のうち、一番端の部分、図で言う紫の部分は、 直径を単純に n 等分した 2n よりも小さいです。 そして x は半径 1 から 紫の部分を引いたものに等しいですから、

12n<1(紫)=x.

y の評価

y は円弧より短いです。 半径1の円の円周は 2π 、 円を直角三角形 2n 個 に分割したので、 1, x , y の直角三角形に対応する部分の円弧は 2π2n=πn 。 これより

y<πn

そして y は半径 x の円弧 xπn よりは大きいです。

y1π/nxxπ/n

x は上で見たように 12n より大きいですから、

(12n)πn<xπn<y.

以上より、次の不等式が得られます。

(12n)πn<y<πn

sn で評価する

n 角形 で評価した s の式から x , y を消して s を n で評価します。。

nxy<s<nyx

x , y の評価式から、

nxy>n(12n)2πn>(12n)2π,nyx<nπn12n<nπn2.

以上をまとめると

(12n)2π<s<nπn2

n が大きくなると 右辺と左辺が π に近づいていくのがわかりますね。

円の面積を求める

上で得られた式から、円の面積が π になりそうだということがわかります。 背理法で円の面積が π になることを確かめます。

円の面積の上側評価

円の面積が π より大きいと仮定して、 s=π+δ ( δ>0 ) とします。

s<nπn2 でした。 この式を整理すると、

π+δ<nπn2δ<nπn2π<nπ(n2)πn2<2πn2(n2)δ<2πn2<2πδn<2πδ+2

となります。 上の式はすべての n について成り立つべき関係式なのですが、 n2πδ+2 以上になると成立せず矛盾します。

よって円の面積は π 以下となります。

sπ

円の面積の下側評価

円の面積が π より小さいと仮定して、 s=πδ ( δ>0 ) とします。

(12n)2π<s でした。 この式を整理すると、

(12n)2π<s(12n)2π<πδ(12n)2<πδπ.

n3 ですから、

12n<πδπ1<πδπ+2n1πδπ<2nn(1πδπ)<2n<21πδπ

となります。 上の式はすべての n について成り立つべき関係式なのですが、 n21πδπ 以上になると成立せず矛盾します。

よって円の面積は π 以上となります。

πs

以上の式より πsπ すなわち s=π となります。